三浦永年さん、ティニ・ミウラさんに聞きました。

あの人と、気仙沼のこと。

2023年9月、気仙沼にオープンした「宮城芸術文化館」は、世界的な芸術家夫妻、三浦永年さんと、ティニ・ミウラさんが、ご夫妻の作品やコレクションを展示する私設美術館です。
登米市出身の永年さんが海外留学中にティニさんと出会い、 海外のさまざまな場所で活動を続けてこられました。この美術館のオープンとともに気仙沼へ移住したお二人に、これまでの活動や、気仙沼の印象などをお聞きしました。

海外での活動

ロンドン、ニューヨークなど世界各地で暮らし、活動してきたお二人。
東京で過ごす学生時代、マーブルペーパーを使用した書籍を手にしたことをきっかけに、卒業後はヨーロッパに渡った永年さん。ティニさんとの出会いもその時だったそうです。美術大学で美術や製本装幀技術を学んでいたティニさんと、永年さんは意気投合し、以来、公私にわたるパートナーとして、創作活動を行ってこられました。

ティニさんの手がける装幀は、一般的に流通する書籍デザインとは異なり、王室の公式文書や、美術館や蒐集家からの依頼で作られる、世界に1点しかない製本のことです。
ティニさんの手により、鮮やかな色彩の革や、金・プラチナ箔などで豪華な装幀が施された本は、本そのものが美術工芸品としての価値を持つものになります。
「とんでもない本が世の中にはあるんです」と永年さんが話す通り、ティニさんが手がけた本は、1冊で数十億の価値を持つ本もあるそうです。

ノーベル賞の賞状制作にも携わり、川端康成氏の賞状をデザインしたのも、ティニさんのお仕事です。
作品を通して、三浦さんご夫妻と、世界的な小説家やアーティスト、ロイヤルファミリーとの華麗な交友関係の片鱗を感じることができます。

ここでしか見られない作品

また、コレクターでもある永年さんが保持している、オリンピックの歴代ポスター、世界一小さい本や、聖書の豆本といった珍しいコレクションも展示してあります。
世界の美術館・博物館に置かれているような作品、あるいは世界中のここでしか見ることができない作品も並んでいる、宮城芸術文化館。永年さんは「これからコレクションも少しずつ展示していきたい」と話しています。

海の街、キールと気仙沼

世界各地を回った二人が、永年さんの故郷である登米に移り住んだのは2017年。そこから、気仙沼へと移り住んだのは、新たな芸術拠点をもとめてのことでした。
ティ二さんは、この場所のオープンにあたり、気仙沼の自然をイメージした長さ11mにおよぶ『天地創造』という大型の壁画を作成しました。鮮やかな色彩と構成からは、ティ二さんの変わらぬ力強い創作意欲が伝わってきます。

気仙沼に来て、故郷ドイツの港町キールを思い出すこともあるのだとか。
「セイリングボートのワールドミーティングの時期は、とても楽しく賑やか」と話すティニさん。
海産物も好物で、今年の夏気仙沼で初めて食べた「ウニ」の、新鮮で濃厚な味に驚き、いくつも召し上がったそう。また、魚だけでなく、差し入れでもらった「大谷いも」もとてもおいしかったと教えていただきました。

「食べ物も、人も、気仙沼の全てがすばらしい」と話してくださったご夫妻。
縁あってこの地へと辿り着いたお二人が、芸術文化の拠点と、そこでの新たな出会いを生み出しています。

プロフィール

三浦永年さん
登米市出身。マーブルペーパーの制作者であり、マーブルペーパーやペースト紙など、装飾紙のコレクター。ロートレックやミュシャなどの石版画ポスターを蒐集し、宮城県美術館や川崎市民ミュージアムなどにも約700点を寄贈。
ティニ・ミウラさん
ドイツ出身。製本装幀家として、イギリスのエリザベス女王、スウェーデンのグスタフ国王をはじめ各国の王室の公式文書を制作。ノーベル賞賞状の制作を担当、日本の受賞者の川端康成などの賞状も制作。超大型版鳥類図鑑『アメリカの鳥』、超大型版植物図鑑『ボタニカ・マグニフィカ』など美術館・博物館・蒐集家への愛蔵本、貴重本を多数制作。

「宮城芸術文化館」についてはこちらをご覧ください。

これまでの「あの人と、気仙沼のこと。」シリーズはこちら。


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