気仙沼市出身・気仙沼在住のシンガーソングライター、熊谷育美さん。幼少期から音楽に触れ、学生時代 には作詞作曲もするようになり、2009年にはシングル曲「人待雲(ひとまちぐも)」でメジャーデビュー。映画・ドラマの主題歌担当、アルバム制作、コンサート等、精力的な音楽活動を続けながら、ラジオパーソナリティーや「みなと気仙沼大使」も務めるなど、その活動は多岐にわたります。
今回は、そんな育美さんに、気仙沼の思い出や、地元への想いをお聞きしてみました。
あの頃の友達と今も
3歳からピアノを始め、中学生になる頃からは日々の想いを言葉にまとめるようになったという育美さん。気仙沼での思い出を尋ねると、幼い頃から音楽に触れてきた一方で、生まれも育ちも気仙沼らしいエピソードのことを教えてくれました。
「学校が終わったら自転車に乗って集合して、同級生と釣りをして遊びました。大川の河川敷ではハゼが釣れて、それを家に持って帰ると、母が天ぷらにしてくれたんです」
気仙沼の自然を満喫しながら、子供たちだけでのびのびと遊んだ思い出が記憶に残っているそうです。
20代の頃には気仙沼の外に出ていった友人たちも、子育て世代となり、地元に戻ってくる人が増え、子供同士が同じ保育園に通うこともあるのだとか。ライフステージが変化しても、当時の友人関係は続いています。
気仙沼にいるからこそ
育美さん自身、高校卒業後に、一度東京へ上京したことがあったそうです。
「東京に行っても気仙沼の人と遊んだり、気仙沼の人がやっているお店に行ったりしていました。みんな気仙沼が好きですよね」
そう話す通り、離れても気仙沼がいつも心のよりどころになっていました。一方で、創作活動は思うように進まなかったと育美さんは言います。その結果、上京して1年ほどで気仙沼に帰ってくることに。
「東京にいなければ夢は叶わない」
そう感じて、一度は音楽の道を諦めかけたこともありました。しかし、育美さんの才能を応援する人たちが、それを諦めませんでした。
まずは、気仙沼の育美さんの自宅に東京からスタッフがやってきて、録音機材をセッティング。「音楽をデータでやりとりして、レコーディングの時だけ現地で録音する」という、ネット時代だからこそできる手法を早い段階で取り入れられたことも追い風となりました。今から20年近く前に、リモートによる音楽活動が始まったのです。こうして、育美さんは気仙沼にいながらにして、メジャーデビューをつかむことができました。
コロナ禍を経て、地方移住と創作活動の両立をする人も増えてきましたが、地方にいてメジャー活動をするのは、当時はまだ珍しく「絶対に無理だ」と言われたこともあったそうです。
当時を「全て周りの方の支えのおかげ」と振り返る育美さんには、忘れられない言葉があります。
「あるスタッフさんが『音楽は居を構えた場所に根差していくものだ』と言ってくださり、気仙沼を拠点に活動することを後押ししてくれました。その言葉がとても響きました。気仙沼の風景と、人々と、食と。そこに囲まれて暮らすことでナチュラルな自分でいられます。その状態で作る音楽こそ、自分にしかできないものなんだと思います」
そんな育美さんの音楽を聴いた人から「東北の風を感じる」という感想が寄せられることもあるそう。
「気仙沼の曲を作ろう、と気負ってはいないけれど、やっぱりここにいるから無意識のうちにそういう表現になるんだと思います」
「帰ってきた」と思える風景
育美さんが音楽番組などに出演した時には、「共演者の皆さんから『気仙沼は海が綺麗だよね』と返ってきて、気仙沼のことを知ってもらえてるんだと実感」したんだそう。
育美さんにとっての気仙沼の自慢は、やはり「海」です。
「大浦から見た気仙沼内湾の景色が好きです。安波山から眺める海の景色も。巨釜半造や、岩井崎、田中浜……遠方のお客さんが来た時には、やっぱり海を見せたくなりますね。私は、気仙沼の海を見ると、ああ帰ってきたなって実感します」
CDジャケットも海辺で撮影されたものが多く、ほとんどが気仙沼で撮影されたもの。そんなところからも気仙沼愛がうかがえます。
おすすめのお土産
現在は「みなと気仙沼大使」も務めている育美さん。せっかくなので、おすすめの気仙沼土産をお聞きしてみました。
「気仙沼の二つの酒造、男山さんの「蒼天伝」と角星さんの「水鳥記」お酒をセットにしたもの。BLACK TIDE BREWINGさんのクラフトビールセットは、お酒が好きな方のお土産に重宝しています。あとは、横田屋本店さんの「朝めし海苔」とか、石渡商店さんの「完熟牡蠣のオイスターソース」、わかめ屋ムラカミさんの「MISO SOUP」とか」
このチョイスは、全国を行き来することの多い育美さんならでは! どれも常温で持ち運びしやすいお土産としておすすめです。
これからも気仙沼で
これからやってみたいことについてお聞きしたところ、
「おいしいものを食べて、綺麗な景色を見て、創作活動をする。これからも変わらず、マイペースに続けていきたい」との答えが返ってきました。
マイペースに……とはいえ、現在は3人のお子さんのお母さんとしても、忙しくされている育美さん。大変なことはないのでしょうか?
「子育てをしてみて、こんなに大変なんだって思いました。でも、子供を連れていると、地域の皆さんが声をかけてくださって、いろいろな人と関わりながら、みんなに育てていただいてるような感じがします」
子育ても音楽活動も、気仙沼にいるからこそ両立できていると、育美さんは感じているそうです。音楽活動のハンデになりそうなことが、逆に自分にしかない個性となり、仕事の糧になる。働き方のロールモデルとしても憧れますが、気負わずあくまで自然体でいる、という育美さんのスタンスがとても魅力的でした。
さらに今年は「気仙沼外の方々に、気仙沼を楽しんでもらえるような企画を考えられたら」と抱負を語ってくれました。
遠方へのお出かけも増えてきそうな今年、ぜひ、育美さんおすすめの美しい海を見にきてください。
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