気仙沼で1か月インターンをしています杉村と申します。出身は静岡県で現在は宮崎県の大学に通っています。行ったことのない場所で様々なことに触れ学びたいと思い気仙沼にインターンに行くことを決めました。

早速ですが、気仙沼の方々の熱い思いから生まれた「しごと場・あそび場ちょいのぞき気仙沼」について紹介します。

1.ちょいのぞきとは?

しごと場・あそび場ちょいのぞき気仙沼(以下、ちょいのぞき)とは、普段は入れない仕事場の見学や体験を通して、気仙沼の暮らしや魅力を体感できるプログラムです。気仙沼ならではの仕事・文化をちょいのぞきするというコンセプトで行われています。

プログラムには、漁業に関わる氷屋さん、函屋さん、漁具屋さん、漁業の他にもそば打ち体験や酒蔵見学など多くのプログラムがあり、夏には自由研究の題材にぴったりということから「夏休みの宿題大作戦」といった企画も行われています。ちょいのぞきを行っている、漁具屋さん、氷屋さんにちょいのぞきに対する思いを聞いてみました。

しごと場・あそび場ちょいのぞき気仙沼

2.漁具屋さん ~アサヤ株式会社~

アサヤ株式会社さんは漁業資材を販売している会社で、会社の中にある大きな倉庫にはたくさんの漁業資材が置かれています。漁具屋のちょいのぞきを通して、漁業の魅力を伝えていきたい、という思いからプログラムを開催しています。アサヤさんで扱っている漁具はなんと3万点!その中の一つを紹介します。

これ、何の道具か想像つきますか?「こんなに長いロープ、何に使うんだ?」と僕には想像がつきませんでした。アサヤの廣野一誠さんに話を聞くと、マグロ漁に欠かせない道具なんだそうです。

マグロ漁では、延縄漁(はえなわりょう)という漁法が使われていて、その仕掛けの枝縄(えだなわ)という部分なんです。言葉だけではよく分かりませんよね?イラストを用意したので、こちらを見てみてください。

イラストの赤丸の部分が枝縄です。長さは枝縄の部分だけで約30m。さらに、この枝縄1本は仕掛けの一部分でしかありません。イラストの黒丸の部分を幹縄(みきなわ)といいますが、ここに枝縄がなんと約3,000本もぶら下がっているのです。

もう壮大すぎて、訳が分からなくなってきました。では、この仕掛け全体ではどのぐらいの長さになるのでしょう?

長さはなんと150㎞!だいたい東京駅から静岡駅ぐらいまでの距離です。

僕は初め、マグロ漁の仕掛けといっても、せいぜい300mぐらいだろう、と思っていました。それがなんと、150㎞。想像の500倍、もう笑えてきちゃいます。

これだけ大きい仕掛けのため、延縄漁は時間もかかります。仕掛けを海に投げる投げ縄作業は約6時間、仕掛けを回収する揚げ縄作業はなんと、約9時間にも及びます。マグロ漁師さんはこんな大変な作業を日々しているんですね。

そんな漁師さんを支えるのがアサヤさんのお仕事。漁師さんの要望にそった漁具の改良や、時にはオーダーメイドの道具まで作っています。下の写真は先ほど紹介した、枝縄の先の針の部分です。

この針の根元、赤い部分があるのが分かりますか?150kmにも及ぶ延縄の道具のうち、枝縄の一部分のたった数センチですが、ここも意味・理由があってこうなっています。気になるその意味・理由については、是非ちょいのぞきで確かめてみてください。

アサヤさんにはこんな漁具がたくさんあり、様々な学びや体験ができます。気仙沼の漁業で実際に使われる道具に触れた上で、気仙沼で獲れた海産物を食べるには、またひと味違った体験になるのではないでしょうか。

アサヤ株式会社

3.氷屋さん ~株式会社岡本製氷冷凍工場~

続いては株式会社岡本製氷冷凍工場、通称・岡本製氷さんです。岡本製氷さんは気仙沼の水産業を支える氷屋さんですが、ただの氷屋さんではありません。氷の水族館という観光施設を運営するなど、様々な新しいチャレンジをしています。

氷の水族館に入ると、今にも泳ぎ出しそうな魚たちが氷の中にたくさん閉じ込められていて、まるで魚の大群の中にいるようです。「どうやって作っているんだろう?」「瞬間冷凍してるのかな?」と疑問が湧き上がってきます。

ということで、実際にどうやって作っているのか、岡本製氷の岡本貴之さんにお話を伺うために工場へとお邪魔してきました。下の写真にあるのが、魚を保冷するために通常の業務で使っている角氷です。これを作るのにも、約48時間という長い時間が掛かっているのだそうです。

ところが、このやり方だと氷の一部が白く濁ってしまい、氷の水族館にあるような透明な氷にはなりません。そこで、4日間(96時間!)というさらに長い時間をかけて、不純物を取り除きながら冷やしていくことで、氷の水槽に使われるような氷を作っているのだそうです。(瞬間冷凍どころじゃなかった・・)

こうして作った氷の水槽は本当に透明度が高く、魚の細部までくっきりと見えます。とても繊細で難しい作業だそうで、岡本製氷さんの技術力の高さが実感できますね。

氷はただ冷やすだけのものではない、氷の可能性を多くの人に知ってもらいたい、氷の水族館を通じて気仙沼をもっと盛り上げたい、という岡本さんの思いを聞き、僕は圧倒されました。ご自身の会社のことだけでなく、氷の可能性の追求していく、なんてカッコよすぎます。氷の水族館はマイナス20℃の極寒ですが、岡本さんの思いはめちゃくちゃ熱い!

実際に氷を作っている様子については、ちょいのぞきに参加すると見ることができます。僕のように、氷屋さんの熱い思いに圧倒されるはず。是非、ちょいのぞき、氷の水族館へと足を運んでみてください。

株式会社岡本製氷冷凍工場

気仙沼海の市 氷の水族館