豊かな自然に囲まれている気仙沼は、とれたての海の幸、山の幸が集まります。
今回は、気仙沼の地元の人たちに、そのおいしさがよく知られている「気仙沼いちご」をご紹介します。
気仙沼の階上(はしかみ)地区では、震災前からいちご農家が複数あり、地元を中心に流通してきました。今回お話を伺ったのは、2010年からいちご農家をはじめたという三浦拓也さんです。
社会に出てから、一度企業勤めをしていた三浦さんですが、父親が椎茸農家をしていたため、いつかは農業を継ぐつもりでいたそうです。しかし、実は椎茸が苦手だったという三浦さん。「だったら、椎茸じゃなくて、いちご農家をやってみるのはどうか?」と父親から提案されたのをきっかけに、様々な農家を見学に行くようになり、いちご栽培の面白さを感じたといいます。
研修期間を経て、いよいよ、いちご農家としてのスタートを切った3ヶ月後、東日本大震災が起こりました。自宅はギリギリのところで浸水を免れたものの、建てたばかりのいちごのビニールハウスは、津波で全て流されてしまいました。階上地区で20軒あったいちご農家のうち、震災後残ったのは2軒のみ。震災を機に農業自体をやむなく辞めることになったところも多かったそうです。
「そのときは自分はまだ27歳で、収穫が1度もできていなかったので、農家を辞めるつもりは一切なかった。何年かかってもいちご農家をやろう、と思いました。」と当時を振り返る三浦さん。お客さんや、周囲の助けもあり、県内でもかなり早く2012年から農業を再開させることができました。その後、三浦さんに追随するように、若い人が新しくいちご農家をはじめたところもあり、現在では同地区に10軒ほどのいちご農家があるそうです。
気仙沼いちごは、消費地域が近いゆえに、もっとも甘くなる「完熟」に近い状態で収穫することができます。いちごはどうしても傷みやすく、輸送時間を考慮してまだ少し青みがあるうちに収穫することが多いのですが、気仙沼いちごの出荷先は、ほぼ気仙沼市内であるため「ギリギリまで栄養を受けた実を出荷できる」ことになります。
また、気仙沼いちごは、11月下旬から、6月の上旬(または中旬くらい)まで収穫が続く「冬いちご」と呼ばれるもの。太平洋側である気仙沼は冬でも日照時間が長いことから、冬に収穫するいちごの生育に向いています。また夏よりも冬の方が実がつくまでに時間がかかるため、栄養を吸収する時間が長くなり、その分甘みが強くなるのだそうです。
ちなみに、三浦さんが育てている品種は甘みと酸味のバランスが良い「とちおとめ」。果実のかたさもしっかりしており、見た目も艶があるため、スイーツにも向いている品種です。
「まずは、地元に愛されるいちごとして育てていきたい。気仙沼いちごを食べに遠くから人が来てくれるようになったら嬉しいです」と三浦さんは話します。気仙沼市内の人気スイーツ、喫茶マンボの「イチゴババロア」や、和菓子店いさみやの「いちご大福」など、にも三浦さんのいちごが使用されており(期間限定)、このスイーツを目当てに、遠方から訪れる方も年々増えてきています。
収穫期間中は、ほぼ毎日気仙沼市内の産直「JA菜果好(なかよし)」で、購入することもできますので、地元の方はぜひチェックしてみてくださいね。
気仙沼いちご
- 収穫時期
- 11月下旬〜6月上旬(JA、スーパーなどでの販売は1月下旬〜5月まで)
- 味の特徴
- 完熟で甘い
- 購入できる場所
- JA菜果好、市内スーパー
- 生産者
- 三浦拓也さん、階上地区のいちご農家
気仙沼いちごを使った商品を製造・販売しているお店
- 店舗名
- 喫茶マンボ
- 住所
- 宮城県気仙沼市南町1丁目4−1
- 提供期間
- 2月中旬〜5月上旬(その年によって期間は変わります。)
- 店舗名
- いさみや
- 住所
- 気仙沼市本吉町津谷舘岡12-3
- 販売期間
- いちごシーズンのみ限定販売
- 店舗名
- アンカーコーヒーマザーポート店
- 住所
- 宮城県気仙沼市舘山1丁目6-31
- 提供期間
- いちごシーズンのみ限定販売
▼気仙沼の「海のあじ、山のあじ」をご紹介しています。
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