気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館 見学レポート

おすすめ 2024/03/06

年月が経つにつれ、記憶は薄れていってしまうものですが、東日本大震災の発生日である3月11日が近づくと、自然と震災や防災への関心が高まります。この時期、気仙沼に住む私たちにとっては、改めて日々できることをを考える機会になっています。
今回は、気仙沼出身で、現在大学3生の髙橋啓さんが、東日本大震災の記憶と教訓を後世に伝えるための施設、気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館を取材してくれました。震災当時はまだ幼かった髙橋さんですが、時が止まったような震災遺構に触れることで、どのようなことを感じたのでしょうか?


こんにちは。一般社団法人気仙沼市観光協会でインターンシップをしている、大学3年生の髙橋啓です!日本海側の山形県から、生まれ故郷の気仙沼にUターンしてきました。

今回は、間もなく東日本大震災から13年ということで旧向洋高校校舎「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(以下伝承館)」を取材し、改めて震災の記憶を継承することについて考えました。

入館!

今回館内を案内してくださったのは、伝承館副館長の熊谷心さんです。

まず初めに、震災当時の映像資料と写真のパネル展示を見学します。跡形もない街の風景を目の当たりにして、これが自分の生まれた地で現実に起きたのかと衝撃を受けます。
映像が頭に残るなか、次に見学するのは実際に津波で破壊された校舎内です。

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ポイントは、そこにあるはずのない物があること

例えば、トイレに応接室用の大きなイスが鎮座している様子はかなり異様な光景です。
校舎内には、どこから流されてきたのかわからないものがたくさん散らばっていて、震災当時のまま保存されています。

壮絶な遺構の窓から、のどかなパークゴルフ場が見えるのが印象的でした

当時、生徒は全員避難したものの、校舎には約20名の教職員の方々が、大事なサーバーや書類を守るために残る判断をしたとのこと。校舎の4階まで津波がおそったことを考えると、生きた心地がしなかったことでしょう。結果的には校舎にいた全員が助かりました。
この建物で亡くなった方がいなかったこともあり、ここを「記録」「継承」するための施設として遺すことになったそうです。

3階・4階へ

階段を上り3階に行ってみると「教室の中に自動車がひっくり返っている」という衝撃的な風景が広がっています。この場所は各種メディアでよく取り上げられるため、目にしたことのある方も多いかもしれません。

しかし、私はその周囲にあった「あるもの」がより印象に残りました。それが次の画像です。

散乱した書籍

潰れたロッカーの中には生徒の作業着が

教科書などの書籍類、ロッカーや作業着は、なんでもない日常の中にあったものです。
だからこそ、逆にそれらが、津波襲来のその時まで、校舎の中に日常生活があったことを物語っているように感じました。そして、震災遺構は、決して非日常のものではなく、日常の中に震災はやってくるのだと気づかせてくれました。

最上階の4階に行ってみると、教室内に謎の物体が散らばっていました。

横から見るとこんな感じ

なんと、ここは近くの冷凍工場(!)が丸ごと流れてきて、校舎にぶつかってきたというのだから驚きです。謎の物体の正体は、衝突の衝撃で校舎内に入ってきた工場の断熱材だったのです。外から見てみると確かにぶつかった場所がえぐれており、とんでもない力が加えられたことが一目でわかります。

巨大な冷凍工場を軽々持ち上げてしまう大津波のパワーを改めて思い知らされることとなりました。

屋上

屋上からは、当地の地形を直感的に理解することが出来ます。海抜は0mとのことで、海までひたすら広大な平地が続いています。屋上から見える杉ノ下地区の高台では避難所に指定されていたにもかかわらず、多数の方が犠牲になっており、予測できない巨大津波の恐怖を感じました。屋上にのぼることで、とんでもない津波の高さを実感することができます。

中庭を覗いてみると、今年(2024年)の3月10日夜に開催されるメモリアルナイトミュージアムの準備が行われていました。

▽メモリアルイベントについてはこちらから▽

校舎の外へ

なんの建物かわかりますか?

何かパッと見た感じだと事務所みたいな建物の跡があり、何だろうと思ってみていると正体はなんと体育館。屋根の部分が無いと分からないものですね。屋根の一部は隣の生徒会館にひっかかっていました。

そのすぐ横には、大量の瓦礫と5台の自動車が折り重なっています。建物と建物の間で渦潮が発生したことでこのような状況になったらしく、このように目に見える形で渦潮の跡が遺っているのはかなり珍しいとのこと。

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そこから見学ルートは北校舎に入ります。両脇を別の建物に挟まれているために被害が比較的軽かったとのこと。こういったことから津波の性質を学ぶこともできます。

来館した方からの大量のコメントは圧巻

最後は再び資料コーナー(撮影禁止なので写真はありません。御容赦ください!)。

インタビュー動画とその方々が津波到達まで、どのような行動をしていたかを地図上に表示するプロジェクトマッピングなどの展示が並んでました。震災直後の市内を撮影した写真が多数あり、痛々しい光景ではあるのですが、どこか懐かしいような気持ちにもなりました。

最後は、当時被災した階上中学校卒業式の映像が上映されていました。私の他にも来場者の方々が数名いらっしゃいましたが、皆さん食い入るようにスクリーンを見つめていました。
生徒代表の答辞は何度見ても胸にこみあげてくるものがあり、自分も、震災当時の記憶が鮮烈に蘇ってきました。

当時そのままの姿の場所を見学できることで、震災の「リアル」を思い出すことが出来る。そんな唯一無二の施設だと思います。市外の方はもちろん、市内の皆さんにも見学していただければと思います。

防災グッズチェックリスト

震災遺構伝承館では、「防災グッズチェックリスト」を配布しています。主に見学に来た学生さんなどに配っているそうです。災害時や非常時に必要となるものが一通り網羅されており、一目でチェックできる優れものです!

ぜひ一家に1部、災害への準備がきちんとできているかを改めて確認してみてください!

施設名
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館
住所
〒988-0246 宮城県気仙沼市波路上瀬向9-1
TEL
0226-28-9671
休館日
月曜日(祝日は開館)
開館時間
4月~9月 9:30~17:00
10月~3月 9:30~16:00
公式HP
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館