気仙沼の食材と地酒とのペアリングを追求せよ ~前編~「港町の味覚には港町の酒?」
目次
1.気仙沼クルーカード会員が選ぶ「好きな気仙沼の食べ物」
2.地酒と地の肴を味わう旅
3.最近流行? 日本酒のペアリング
4.ペアリング,それぞれの意味合い
5.逆輸入された⁉ 日本酒の新しい楽しみ
1.気仙沼クルーカード会員が選ぶ「好きな気仙沼の食べ物」
「冬はやっぱり牡蠣だね」
「私は冬メカのしゃぶしゃぶ」
「せっかくだからお寿司のうんといいどこ食べだい」
気仙沼で食べたい食べ物・食材はなにか。どんな料理を食べたいか。気仙沼のファンであり、ヘビーユーザー的な存在である気仙沼クルーカードの会員にこれまで数回アンケート調査を実施している。
「牡蠣」「メカジキ」「ウニ」「サンマ」… 気仙沼を味わい尽くした「通」から気仙沼には1回来ただけという方まで、季節それぞれいろんな気仙沼の食材や料理を回答してもらえるのがとても面白い。
我が探偵局もその調査に協力をし、毎回結果を見ているのだが、結果をみて驚いたのは、回答に「海鮮」という言葉があったこと。そしてその数が結構な数に上ったことだ。
漁港が近くで魚が身近な街に育つと、気仙沼で食べたいものは? との質問には「ふかひれ」だの「戻りがつお」だの、個別の食材名や料理名での回答を予測しがち。
だが、実際多くの人はそんな具体的な魚の名前ではなくて、気仙沼に行けば美味しい「魚」「海鮮」「海の幸」が味わえると思って来てくれるんだという事実に気づけたのが大きな収穫だった。
そしてもうひとつの収穫は「日本酒」。
食べたいものは何か?と聞けば「気仙沼の地酒」。
気仙沼に来る旅行の目的は?との質問には「気仙沼の日本酒を味わう」。
これが季節を問わず上位にランクインしていることだ。
確かにこの街は酒も旨い。「角星」「男山本店」という2つの酒蔵が競い合ってそれぞれ素晴らしい銘酒を生み出している。
角星 |
男山本店 |
2.地酒と地の肴を味わう旅
旅先でその土地の酒を飲むのは私も好きでよくやることだが、「酒」を目的に港町へ旅をするというのも新鮮な感覚だった。
居酒屋評論家であるデザイナーの太田和彦は「地方の漁港を訪ね、居酒屋に入り、とれたての刺し身で一杯やるのは酒飲みの憧れ」と言う。
私も酒飲みであり、旅先で居酒屋にふらっと入り、地の食材にその土地の酒を合わせて味わうのは旅の醍醐味であり、こたえられない。
気仙沼の両蔵の酒は魚にとてもよく合う。
港町の酒は港町の味覚にぴったりだ!
と言われている……
うーん。
それって本当? 港町の酒って本当に港町の食に合うの? 思い込みじゃなくて??
うーん。
気仙沼にはいろんな食材があるけど、どの酒にどの食材が合うの?
日本酒にも純米も純米吟醸も純米大吟醸もあるし、生酒とか活性酒だとかもあるよね。
気仙沼は古酒の有名なお店もあるよ。
よーし。
編集長から早く続編を書けとせっつかれていることだし、今回はこれをテーマとして取り上ることにしよう。
気仙沼の酒は本当に気仙沼の食に合うのか。酒好きの探偵は自腹で嬉しい調査を始めた…
3.最近流行? 日本酒のペアリング
ワインの世界でお馴染みの「ペアリング」という言葉が最近日本酒の世界でも流行しだしている。
「ペアリング」とは料理と酒の相性を判断しそれぞれを組み合わせることで味の相乗効果を生むこと。「マリアージュ」などとも言われている。
これはやはりワインで説明するとわかりやすいのだが、もともと食事をしながら飲むために作られているワインは、料理に使われる食材やソースの味との相性が古くから言われ、考えられている。
例えば一般的によく言われる「牛肉には赤ワイン」、「鶏肉や魚には白ワイン」というのがそれだ。
もちろん味覚なのでこれらは厳密にいえば絶対的な正解はないのだろうが、フランス料理やイタリア料理などのレストランでは、客がワインを選ぶ際の手助けをする専門知識を持つスタッフがおり(いわずと知れたソムリエのこと)、そのお店の料理との組み合わせをアドバイスしたりする。
4.ペアリング、それぞれの意味合い
料理とお酒には大きく分けて次の5つのタイプの組み合わせがあるといわれる。
同調、五味のバランス、中和、風味、食感がそれだ。
同調とは、同じ味わいのものを合わせること。
例えば甘いものに甘いお酒を。
五味のバランスとは、甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の5つのなかで欠けるものを料理とお酒で補い合うこと。
中和とは、例えば塩辛いものに甘いものをあわせるなどをして中和すること。
風味とは、例えば香りの方向性をあわせること。
食感とは、例えば温度や硬さがあうこと、などの通りである。
「マリアージュ」も同じように使われるが、これは本来は「最上の組み合わせ」を意味し,マリアージュ=フランス語で結婚、というように、結婚のように新しい幸せを生み出す組み合わせ、という意味合いだそうだ。
ワインと同じく醸造酒である日本酒も、食中酒として楽しまれてきたが、どちらかといえば日本酒は「酒そのものの味わい」、食事との組み合わせではなく「酒単体のテイスティング」を楽しむことに興味が向いていて、これだけたくさんの銘柄や酒の種類がありながらも、それをどう料理と組み合わせるかということは、一般的にそれほど注目されてこなかったと思われる。
むしろ日本酒は「すべての料理に合う」と言われ、飲む側も組み合わせを意識してこなかったように考えられる。
それは日本酒の原料がお米であり、そもそも和食が白いご飯に合うように構成されていることを考えると「すべての料理に合う」というのも頷ける。
ブドウを原料とするワインとの大きな違いはそこにあるように感じる。
それが近年、料理と日本酒をワインのように組み合わせる楽しみが流行しはじめている。
5.逆輸入された⁉ 日本酒の新しい楽しみ
昨年、日本酒とのペアリングを売りにしている東京・麻布十番のレストランに行ってみた。
コースで提供される料理一皿ごとに、お店の日本酒ソムリエが選んだ日本全国から集めた酒がそれぞれ提供される。
料理と酒が口の中で混然一体となり、味わいが膨らむ楽しさを次から次に楽しめた。
そのソムリエはもともとワインのソムリエの資格を持っているが、ニューヨークで勉強するなかで日本酒の楽しさに目覚め、ワインのように日本酒と料理のペアリングを追求したお店を開きたいと、帰国後店を出したという。
日本酒の評価や知名度が海外で高まり、輸出が増加するにしたがって、日本酒の味わい方が進化したというべきか、食中酒として料理と組み合わせる新しい楽しみ方が逆輸入のような形で広まりだしている。
そんな料理と日本酒との組み合わせ、ペアリングを気仙沼の食材と気仙沼の酒でできないだろうか。
それができれば、旅人に新しい食の旅の楽しみを提案できるのではないだろうか。
そのためには、まず気仙沼のお酒の特長を知ろう。ということで探偵は気仙沼の2つの蔵を訪問した。
角星 |
男山本店 |
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