風待ち地区「小野健商店」

港町・魚問屋の土蔵コレクション

未分類 2024/07/18

こんにちは、市民ライターのみきのです。

今回は、私も見せていただいてビックリ!の知る人ぞ知る魚問屋の土蔵コレクションについてご紹介します。

震災後に修復した「小野健商店土蔵」の外観

港町である気仙沼には昔から魚問屋がたくさんありました。そのひとつ、南町にある「小野健商店」さんは、大正5年(1916年)に創業され、魚問屋として日本各地の漁船の操業はもちろん入港から出港までを陸から支えるとともに、廻船業やマグロ船の経営、仲買を行っています。

「小野健商店」さんの敷地内には、昭和25年(1950年)に気仙大工によって建てられた土蔵があり、土蔵には、船の食料品、薬、船具類の収納、貴重品の保管庫として使用していました。当時土蔵には、家主以外は中に入れなかったといいます。
平成18年(2006年)には国の登録有形文化財になりましたが、平成23年(2011年)の東日本大震災では、外壁がはがれ、装飾が破損するなど大きな被害を受けました。その後、修復にあたっては、土蔵は40センチ持ち上げられたうえで、後方へ35センチ移動させるなど、大規模な工事を経て平成29年(2017年)には修復が完了し、見事に蘇ったのです。
黒漆喰の重厚な扉、白漆喰に海鼠(なまこ)壁の外壁、また、雲に鶴、波に亀など海をモチーフにした鏝絵(こてえ)装飾が良い状態で保たれています。(㈲小野健商店土蔵パンフレットより引用)

▲土蔵の重厚な扉
▲海鼠(なまこ)壁と水切り
▲正面の鏝(こて)絵(つる)

そんな土蔵ももちろん見応え十分で是非ご覧いただきたいのですが、土蔵の中にある数々のコレクションがこれまた凄かった!

土蔵内のコレクションが凄い!

1階には船箪笥や車長持、その上には素朴な味わいの様々な土人形がずらり!どれも愛らしいお顔の土人形です。時代も明治、大正、昭和のものがあり、それぞれの時代を感じさせるものでした。土人形や掛け軸、玩具などは、船の方からお土産にいただいたものだとか。船箪笥は、もともと船に貴重品を入れて積み込んだもので、水が入らないようになっていたり、盗難防止のため、簡単に人目に触れない内部構造で、隠し引き出しがあったり、二重底や、扉や引き出しに見えて実はずらして外す、など様々な仕組みのからくりがあるのだとか。

▲土人形

2階に上がると魚問屋さんならではの昔の漁具、船の羅針盤や霧笛、お祝い事や船出の際に使われた道具類や昭和20年代の販売伝票(帳簿)、明治時代からの資料があります。今となってはどれも貴重なものばかりですね。
そして、次に蔵主の小野寺健蔵さんが出して見せてくれたのは、なんと古伊万里!「小野健商店」さんは、九州に取引先があったため、やきもの文化の九州の取引先からいただいたり、もともと先々代がやきものを好きだったこともあり、趣味で古伊万里収集もされてきたそうです。徳利や長角皿、沈香壺など、古伊万里好きな人には堪らないものばかり!そして、蕎麦猪口も初期伊万里から柿右衛門様式、江戸後期のものまでずらりと飾られていました。蛸唐草などの植物文様や連続文様、枯淡の青と言われる染付や色絵を見ていると飽きません。思わずこの蕎麦猪口でお蕎麦を食べたら、さぞや美味しいだろうな~なんて思ったり…。

▲古伊万里の沈香壺
▲古伊万里の徳利と長角皿
▲古伊万里の蕎麦猪口(色絵)
▲古伊万里の蕎麦猪口(染付)

私が一番興味深かったのは、「たばこ入れ」です。「たばこ入れ」は、「キセル」や「たばこ」を1つにまとめて携帯するためのもので、庶民が着飾ることは幕府によって制限されていた時代、彼らがささやかに身を飾るための唯一のこだわりだったといいます。
持ち主のこだわりを反映し、キセル筒や根付、緒締、前金具など、こぞって珍しい素材を用いて、金工や漆芸をはじめとした様々な分野の職人たちの巧みな技で装飾を施していて、見ていてとても楽しく、他のももっといろいろなたばこ入れを見てみたいと思ったほどです。当時は、たばこ入れを誂えることがステータスシンボルだったのでしょう。そして、たばこ入れにそれぞれの個性が垣間見られた、といったところでしょうか。

▲たばこ入れ
▲地方貨幣

ほかにも、地方貨幣や、刀の鍔、角メンコ、更紗、陶芸家・浜田庄司氏の作品や岩手県一関市千厩出身の白石降一画伯の絵画など、この土蔵には数多くのコレクションがひしめいているのです。

▲刀の鍔
▲角メンコ

蔵主の小野寺健蔵さんは、こういったコレクションをたくさんの人たちに観ていただき、古民芸の手しごとの奥深さと楽しさを感じてもらいたい、とおっしゃいます。見どころ満載の土蔵と合わせて大変興味深いコレクションの数々、本当に保管しておくだけではもったいないものばかり!まさに、「一見の価値あり!」です。できれば、すべてのコレクションの展示を観てみたいのですが…。
事前に予約すれば、土蔵の見学ができ、小野寺さんから数々のコレクションの話や、港町・気仙沼の話など、いろいろなお話を伺うことができます。骨董品などがお好きな方や興味のある方は、ぜひお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

建物名
小野健商店土蔵
住所
宮城県気仙沼市南町1-3-14
電話
090-3123-0910(小野寺)
営業日
事前予約のみ
見学料
200円(説明付き)*見学料は、蔵の修繕保存費などに使われます。

気仙大工…気仙地区(大船渡市・陸前高田市・住田町)を中心とした大工集団で、民家の建築はもちろん、寺院造営、建具づくり、細工までもこなす多能な集団。

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