2022年3月11日。
東日本大震災から10年という節目の年を過ぎ、今年で丸11年の月日が経とうとしています。街の復興が進み、景観が日々変わりゆく中、この街で新しいことにチャレンジをしているみなさんにお話を聞きました。
お話をお聞きした人たち。
SCK GIRLS まりかさん
気仙沼のローカルアイドルグループ「SCK GIRLS」の(初期のグループ名は「SCK45」)まりかさんは、中学生のときからアイドルの活動をスタートしました。現在は市の観光やプロモーションに携わる市役所職員を兼業しながら、街の魅力や、復興への足取りを様々な形で発信しています。
観光の楽しさも、震災の記憶も伝えていく。
震災時に中学生だった私は、周囲の大人たちが復興・復旧に向けて動き出す大人たちの姿を見ながら、自分にできることは何か?という思いをいつも心に抱いていました。当時「自衛隊の人たちに感謝の色紙を渡す」ことがあったのですが、それすらも大人の手を借りなければできませんでした。とはいえ、街を元通りにするのは途方もないことですし、いち中学生には何の役にも立てないと痛感していました。何かしなくちゃ、でも何をしたらいいかわからない。そんなもどかしさを感じている時に、SCK GIRLSに出会いました。
もともと、SCK GIRLSは、子供達がアイドル活動を通して楽しめる場所を作ろうとスタートしているのですが、ステージに立つたびに「もっとお客さんに笑顔になってもらいたい」「自分たちを通して気仙沼のことを好きになってほしい」という気持ちが強くなっていきました。
2012年からは「復興メッセンジャー」として、全国各地に気仙沼からのメッセージを届けてきました。時には、追悼の意味を込めたオリジナル曲を歌うこともあります。街の魅力を伝えながらも、震災の被害を受けた街であるという事実を切り離さないようにしています。それも含めて、気仙沼の今の街があるんだということをしっかり伝えていきたいです。
この街で、いろんな夢を見たい。
アイドル活動をする中で、大人たちが街の復興に関わる姿を間近で見ることができ、自分はこういうふうに街を元気にしたいというビジョンを持てました。今は、自分も大人の一員になり、気仙沼市の観光やプロモーションの仕事と、アイドルと兼業させてもらっています。街が完全に元通りになることはありませんが、好きな場所はどんどん増えていていて、気仙沼の人がより良い街を作ろうとしているのを肌で感じています。
私はアイドルとして、夢や希望を伝える象徴になりたいと思っています。皆さんと一緒にこの街でいろんな夢を見ていきたいです。
SCK GIRLS 公式ブログ:https://ameblo.jp/sckgirls/
SCK GIRLS Twitter:@SCKGIRLS
まりかさんTwitter:@princessttel
Youtuber アナハゼティさん
釣りや昆虫採集などのアウトドアアクティビティを中心に動画を投稿している「アナハゼティ」は、気仙沼出身の「りゅう」「ナオサン」のYoutuberユニットです。アナハゼティチャンネルには、初心者向けからマニアックなものまで幅広い動画が投稿されており、同級生である二人の息のあったトークも魅力です。気仙沼の様々な釣りスポットで、二人が楽しそうに釣りをする動画を見て、気仙沼を訪れる人も増えています。
初めて釣りをした時の「楽しさ」を忘れない。
ナオサン:2人とも、気仙沼の小中の同級生で、社会人になって僕は東京で働いていて、りゅうはオーストラリアにいました。気仙沼に戻ってくるタイミングがちょうど同じ頃で、バイト先で偶然再会したんです。
りゅう:僕はもともと釣りが好きだったので、二人で釣りに行くようになりました。アルバイトをしながら、ナオサンは気仙沼のコミュニティラジオでも働いていて、そのラジオ枠が空いた時に、二人で「釣り」をテーマにしたラジオをやることになったんです。始めはラジオのネタ作りの記録として、動画を回し始めました。
Youtubeをスタートさせたのが2018年の7月くらい。現在は登録者は7.25万人です。僕は、釣りが大好きで、いつか「釣りの仕事でご飯を食べられるようになりたい」と思っていました。今はその夢が叶って最高の状態です。Youtubeは全て自分たちでやっているので、良いことも悪いこともダイレクトに反応が来ますが、そこにやりがいも感じています。
ナオサン:僕は釣りはこどもの頃にやったきりでした。釣りに関しては初心者目線で参加しています。りゅうは釣りマニアの目線なので、動画の企画を作る時は二人の意見を出し合って考えています。「おもちゃで魚が釣れるか」といった、他の釣りYoutuberがあまりやらないような企画も積極的にやっています。
アナハゼティの由来になっている魚「アナハゼ」は、小さくて好奇心旺盛、初心者がはじめに釣るような魚です。初心を忘れず、釣りの楽しさを伝えていきたいと思っています。
外から人がやってくる街に。
りゅう:コロナ禍でアウトドアの需要が高まり、女性や、家族連れの釣り客も増えてきました。僕たちの動画を見て釣りを始めたとか、再開したという人もいて、声をかけられることもあります。そういう方々にはぜひ、これからも釣りを楽しんでもらって、釣りをしながら気仙沼でご飯を食べたり、一泊して観光してもらいたいです。サブチャンネルでは気仙沼の飲食店を紹介する動画も投稿しているので、釣りをきっかけに、気仙沼を楽しんでもらいたいという思いがあります。
ナオサン:これからはもっと街が活気付いていってほしいですね。昔は都心でしかできなかったような仕事も、地元にいながらできるようになりました。僕らを見て「気仙沼でも好きなことを仕事にできるんだ」と、若い人たちに感じてもらえたら嬉しいです。
Youtubeチャンネル:アナハゼティ Anahazeti
アナハゼティ Twitter:@anahazeti
りゅうさん Twitter:@ryuanahaze
ナオサン Twitter:@nao_anhz
鶴亀の湯・鶴亀食堂 ひろなさん
気仙沼魚市場のすぐそばにある「みしおね横丁」には、2019年にオープンした、珍しいトレーラー型の銭湯・食堂「鶴亀の湯・鶴亀食堂」があります。この場所ができたきっかけは、長年海の近くにあった唯一の銭湯が閉まり、「漁師が長旅の疲れを癒す場所」として銭湯を復活させようと、女性たちが立ち上がったことです。現在は、漁師の憩いの場でもあり、観光客が港町の雰囲気に触れられる場所としても人気があります。今回は、鶴亀食堂の店長、ひろなさんにお話をお伺いしました。
誰にでもウェルカムな場所。
オープンから約半年後、2020年2月に働き始めて、はじめは副店長、そして現在は店長を務めています。
鶴亀食堂はカウンターのみ(外に桟敷席やオープンテラスあり)ですが、水揚げの多い夏場は漁師さんがたくさん訪れます。漁師さんには「おかえり」とか「行ってらっしゃい」と声をかけたり、いろんな話をしますね。私が気仙沼に移住して働き始めた頃に、「楽しいか?」と心配して声をかけてくれた漁師さんもいました。お客さんだけれども、友達のようでもあり、親戚のようでもある。面白い関係を築けている気がします。
移住するきっかけになったのは、先に気仙沼に移住していた兄のところに、1週間ほど遊びにきたことでした。そこで、若い移住者の人たちや、鶴亀の湯・鶴亀食堂を運営する「歓迎プロデュース」の代表に出会いました。1週間の滞在期間に「暇なら働いてみない?」と言われて、簡単なアルバイトをしたら「仕事はあるし、こっちに住めばいいじゃん」って言われたんです。
ボランティアで来たわけでもないのに、初めて会った人たちにすごくもてなされて、気軽に「住んだら?」と言ってくれるウェルカム精神に感動してしまいました。その雰囲気から、無責任な感じではなく、心から「ここに住んだら楽しいよ」と言っているのが伝わってきたので、私もすぐに移住を決めました。
原色の大漁旗が似合う元気な街の人。
働き始めてからは順調だったのですが、ここ2年はコロナ禍で、お店としては厳しいですね。コロナ前は観光客の人と漁師さんが隣にいて「俺が釣ってきたカツオだから、食ってみろ!」みたいな、お客さん同士の交流もありました。この状況が落ち着いたら、漁師さんがカツオをさばいて、観光客に食べてもらうイベントをやりたいです。
他にもやってみたいことはあって、今、若い世代の魚離れが進んでいるので、まずはお父さんお母さん世代に魚を身近に感じて触れる機会を作りたいと考えています。簡単に処理できる魚をおすすめしたり、手が臭くならない魚料理のレシピを紹介したりして、家でも魚料理が食べやすくなるように働きかけたい。そういう積み重ねによって、こどもたちが大人になった時、居酒屋でも魚を注文するようになるんじゃないでしょうか? 私も鶴亀食堂で働くようになって魚をさばけるようになったので、お客さんにも、ここで魚を身近に感じてもらいたいです。
気仙沼は、私が最初に来た時に出会った、あの大漁旗の原色が似合う、元気な街だと思います。気仙沼の人は「気仙沼は都会に負けてないぞ」っていう自信があって、なにより、住んでいる人たちが楽しそう。ずっとそんな元気な街であってほしいです。
鶴亀食堂 店舗情報はこちら https://kesennuma-kanko.jp/turukamesyokudo/
鶴亀の湯・鶴亀食堂 Twitter:@tsurukamenoyu
鶴亀の湯・鶴亀食堂 Facebook:@kesennuma.tsurukame
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