8月中旬

さんま船一斉出船おくりをご紹介 秋の味覚を届けてくれる漁師さんの旅立ちを見送ってみませんか

未分類 2018/08/16

8月中旬。気仙沼では短い夏が終わりを告げ、秋を感じさせる涼しい風が吹き始めます。

そんな時期の風物詩が、「大型サンマ船一斉出船おくり」です。

 

サンマ漁は漁期が決められているため、気仙沼港に停泊している船は、この時期の漁の解禁に合わせ、一斉に出港していきます。その光景の勇壮さに気づいた気仙沼の女性たちの発案で企画されたのが、「一斉出船おくり」の始まりでした。

出船おくり当日。

長さ30メートルを超える大型のサンマ船が、岸壁にずらりと並びます。

これから数ヶ月続くサンマ漁への出港の瞬間に立ち会おうと、陸には市民や観光客が大勢詰めかけます。打ち囃子に演歌、地元の男性たちが歌う大漁唄い込みなど、威勢のよい音楽が次々に演奏され、熱は徐々に増していきます。

出港の時間が近付くと、船から陸で待つ人たちへと、色とりどりの紙テープが渡されます。「ボーーッ」という長い汽笛が、出港の合図。エンジンが回転数を上げ、船がゆっくりと離岸していきます。紙テープはやがて陸の人たちの手を離れ、船はそれを名残のようになびかせながら、徐々にスピードを上げていきます。船上の漁師さんたちは、それぞれの持ち場の仕事をこなしながら、時には甲板に整列し、陸に向かって手を振ります。

「いってらっしゃーい」。

船との距離に比例するように、掛け声は大きくなっていきます。

大漁と航海の安全を願う極彩色の福来旗(フライキ)の手旗が一斉にはためく中、約10隻の船が次々と出港していきます。S字を描く気仙沼湾。その張り出した岬の先に最後の1隻が隠れるまで、精一杯、手を振り、見送るのでした――。

 

 

遠洋漁業の基地として栄えてきた気仙沼港では、出船おくりは馴染みの光景です。しかし、かつては大勢の人に見送られ、軍艦マーチが威勢よく流れる中行われていた出船も、水産資源の減少や日本人船員の減少などによって、次第に寂しく、ひっそりとしたものになっていきました。

水産業を基幹産業とする気仙沼にとって、命懸けで魚を獲り、港にもたらす漁師さんたちは「スーパーヒーロー」です。せめて出港は温かく、賑やかに送り出したい――。そんな女性たちの思いから、それまで家族や関係者のみで行っていた出船おくりを市民や観光客に開放し、イベントとして行うようになりました。

数ある出船おくりの中でも、8月のこの「一斉出船おくり」は目玉イベントです。大型船が次々に出港していく大迫力の光景はもちろんですが、千人を超える人で送り出す時の一体感と、まるで自分も漁師さんの家族になったかのような切なさと感動を味わえるのも不思議な魅力です。また、この出船に立ち会った後に食べるサンマの味も格別!

秋の味覚を届けてくれる漁師さんたちの旅立ちの舞台に、ぜひ一度立ち会ってみませんか。


This article is written by K.Nakai