1ヶ月間インターンをした東京の大学生が、気仙沼内湾を本気で満喫してみた

こんにちは。石川県出身、普段は東京の大学に通っている、松井と申します。

僕は2018年8月~9月にかけて、夏休みを利用して気仙沼のシェアハウスに滞在し、アサヤ株式会社という漁具を扱う企業で、1カ月間インターンをしていました。平日は8時間勤務、休日は基本のんびり生活でした。そんな僕が、本気で気仙沼を楽しむために考えた、「気仙沼内湾観光プラン」をストーリー仕立てでご紹介します。

観光前夜

残すところ気仙沼もあと一週間。同じくインターンで気仙沼に来ているハウスメイトの ”わっきー” と、「ほんとあっと言う間だったなぁ」と会話をしていました。その時のわっきーの一言で、僕は重要なことに気づいたのです。

わっきー「今週日曜、友達が日帰りで気仙沼遊びに来るんだよね。せっかくだし一緒に観光する?」

まつい(・・・かんこう?そういえば、せっかく気仙沼に来てるのに、ちゃんと観光をしてないのでは・・・!?)

そうなんです。滞在していたシェアハウスは三日町という地区にあったのですが、生活に不便しない市街地だったので、会社とシェアハウスの往復になっていたのです。観光らしい観光と言えば、気仙沼二日目に、フェリーに乗って大島に行ったことくらい。

気仙沼の観光を満喫しないまま、気仙沼を去ることはできません。そういうわけで、最後の休日、わっきーの友達との観光プランを全力で考えることにしました。

 

車社会の気仙沼をどう楽しむか

観光プランを考える上での悩みの1つは、見どころが点在していて、車がないと日帰りでは全てのエリアを回りきれないこと。気仙沼は車社会なので、みんなちょっとしたことでも車を使うのです。ですから、朝・昼・夕方どの時間帯であれ、歩道を歩く人はあまりいません。あえて言うなら、学校帰りの学生か、スナック帰りの上機嫌なおじさんくらいです。

気仙沼は広く、楽しみ方はその土地で全然違います。唐桑に行って海を感じるもよし、本吉で山を感じるもよし、内湾で港街を感じるもよし。

車を借りて全てまわれると良いのですが、僕らはほぼペーパードライバーだし、大学生にとってレンタカーは大きな出費。そこで今回は、

「車無しでも楽しめる!日帰り内湾観光!」

と題して、車がない中でも気仙沼を満喫できるプランを考えることにしました。

魚が水揚げされる気仙沼魚市場や、様々な物産品が買える海の市がある内湾は、港町感満載のエリアです。また、震災の被害を感じることができる場所でもあります。風、気温、街並み、街の音、どれも心地よく、自転車を走らせると最高です。

 

意外な盲点、「日曜日に観光をする」ということ

さてどんな観光をしようかな、と事前に下調べをしていたところ、もう一つの悩みに突き当たりました。それは「日曜日に観光をする」ということ。

「日曜日って休日だし、むしろ絶好の観光日和なのでは?」

と思うじゃないですか。実際、僕もそう思っていました。甘いです。何と気仙沼は、日曜定休日のお店が多いんです。

  • ・気仙沼のソウルフード、揚げあんパンがある紅梅
  • ・震災の様子が残る有形文化財、武山米店や酒屋両國
  • ・気仙沼から世界へ発信するニット屋さん、気仙沼ニッティング
  • ・そして、気仙沼の代表的観光スポット、魚市場

「あぁ、ことごとく訪れたいスポットが候補から外れていく・・・」

ただ、僕も三週間をダラダラ過ごしていたわけではありません。地元の方々の知恵を借りて、最高の旅行プランを考えてやろうと意気込み、プランを練りに練って当日を迎えました。

そして当日。若干の雨です・・・

車なし × 日曜 × 雨

気仙沼観光にあってはならない状況かもしれませんね・・・それでも、めげずに最高の観光プランを実行に移します。

 

11:30 仙台からバスで到着、気仙沼海の市(クルーカードを作る)

まず、11:30にわっきーの友達が到着するので、集合場所の海の市へ向かって合流。ちなみに、友達の名は ”らっしー” です。帰りは16:20に出発する仙台行きのバス。約5時間のぶらり日帰り旅の始まりです。

気仙沼に来たらまずやること、それはクルーカードを作ることです。

クルーカード加入店ならどこでも作れます。そこで買い物すればポイントもたまります。さらに、夏冬の期間限定でクルーカードクーポンもあったりします。海の市2階、観光サービスセンターでも作ることができ、私たちはそこで手に入れました。

 

11:45~12:15 シャークミュージアム

そのまま2階にあるシャークミュージアムへ。日本唯一のサメの博物館らしいです。

シャークミュージアムは4つのゾーンに分かれています。まず入ると目に飛び込むのは、シャークミュージアムに訪れた人たちの声。ここが「絆」ゾーンです。

観光客の声を気仙沼に発信するという意味を込めて作られたようです。訪れた人ならだれでもメッセージを残すことができます。

このあと、「震災の記憶」ゾーンへ。震災の被災状況を語る地元民のインタビュー動画があり、壁には気仙沼の被害を物語る写真と解説。

奥に進むと、震災の状況を映し出す映画館のようなものがあり、震災前と後の比較や、さだまさしさん・渡辺謙さんら著名人が気仙沼に抱く想いなどを流す20分ほどのVTRになっていました。

「賑わっていた生活風景が、一瞬にして消えてしまう。」

その言葉だけでは伝わらない「虚しさ」を映像で感じ、その時に被災した方々が何を想ったのか、考えずにはいられないエリアでした。

次は「海と生きる」ゾーン。

「リアルすぎる・・・。」

真ん中にドンっと置かれ、かなり細かく作りこんである船の模型を見てついみんな声が漏れていました・・壁には、まさに「海で」生きるではなく、「海と」生きる漁師さんの様子が描かれています。

そして最後、「シャークゾーン」。入り口では大きなホホジロザメの模型が出迎えてくれました。

鮫の体の仕組み、種類の説明はもちろん、単なる鮫の紹介では終わらないのが面白いところ。

順路終わりに近づくと、鮫によって死ぬ人(シャークアタック)の数と、自動車による交通事故で死ぬ人(ヒューマンアタック)の数の比較があります。鮫はゼロ人なのに対し、人は何万人にも及ぶとのデータが・・

その後、この世で最も恐ろしいのは?という問いかけが目に入る。下にある答えをめくると・・・答えは自分で確かめてください。面白い仕掛けが施されていますよ!

シャークゾーンを通して、鮫は映画で見るような恐怖の生き物ではなく、解明されていないことの多い不思議な生き物で、気仙沼で生きる人の生活に欠かせない生き物だとわかるはずです。

 

12:15~12:25 濱喜(ホヤ実食)

シャークミュージアムを後にした僕らが向かったのは、海の市1階にある、濱喜さんです。

ここでは、いけすに入っている活魚、活貝類をその場で切ってもらい、食べることができます。なんと、加工料は無料!

らっしーの要望もあり、僕らは気仙沼のシンボル、ホヤを切ってもらい、刺身で食べました。

ホヤって食べたことありますか?ホヤはその見た目から「海のパイナップル」、五つの味覚(甘味、塩味、苦味、酸味、旨味)を感じる食べ物、と表現され、お酒と相性が良いと言われています。僕なら「海の味」という形容がしっくりきますね。

そんな変わった味であるため、好き嫌いも分かれます。わっきーと僕はそれほど好んで食べません。一方、らっしーは大好きで、故郷青森でよく食べていたらしいです。

 

12:25~13:00 岸壁をお散歩(漁船を見る)

そんなこんなで時間はもうすぐ12:30です。ホヤを食べたばっかりですが、そろそろお昼ご飯。行きたいところはもう決めてあります。

行く途中、岸壁沿いを歩いていると船が何隻かとまっています。「この漁具、ハシビロコウみたい!」と、らっしー。

たしかにハシビロコウっぽい・・・笑

本当はこれ、「大目流し網」というものらしいです。

寒流と暖流のぶつかる潮目に、大きい目の網をたるませた状態で沈めます。そこに引っかかってくるのはマグロやカジキ。網で囲むわけでもなく、ただゆったりとたるませて流すだけで自然と絡まってくるらしいです。魚の行動特性をうまく利用した漁法ですよね。

サンマの漁獲方法等も面白いのでぜひ確認してみてください 。

参考:気仙沼漁業協同組合 -漁業について-

 

13:00~13:45 割烹世界(料亭でランチ)

南町紫市場商店街を抜け、お目当ての店が見えてきました。「割烹世界」です。

普段学生だけでは入らない佇まい・・・入ってみるとさらに洗練された和テイストの店内が。

メニューは焼き魚定食(税込1,000円)など、魚メインの料理。

焼き魚定食に使われる魚が、オンタイムで何匹残っているかわかります。みんな焼き魚定食を注文して、僕、わっきーは「かつおハラス」、らっしーは「さんま」。

「・・・これは1,000円の料理じゃねぇぇぇ!」

誰もが思いますよね。最強の気仙沼ランチです。

サンマなんて、こんなに躍動感あります。

「サンマの塩焼き食べたくなりません?」

カツオはでかい上に、ごはんお替り無料だったので、大盛ご飯2杯いただいちゃいました。料理はもちろん、雰囲気、接客、コスパ、すべてがまた来たいと思えるレベルでした。

 

13:45~14:15 内湾をお散歩、五十鈴神社

食後の後は内湾をお散歩しながら五十鈴神社へ。海沿いに歩いていくと、静かな港街と被災地を感じることができます。

歩いている人も少なく、東京のような雑音は何もありません。車の走る音、カモメの声、海の音が聞こえるだけです。

20分ほど歩くと五十鈴神社に到着。

五十鈴神社は漁師さんが安全・大漁を祈って参拝します。大型船の出船の際には、宮司さんが港までやってきて、安全・大漁祈願をしてくれるそうです。とりあえず僕たちも参拝。

神社から階段を降りると、海岸沿いに朱塗りの手すりがある遊歩道があり、対岸の様子を眺めることができます。

 

14:30~14:45 キャンドル工房

神社を後にし、内湾散策の続きです。

地元有名店、居酒屋ピンポン、喫茶店マンボー、ヴァンガードなど、古き良き店が立ち並ぶエリアへ。先ほどの「世界」があった南町紫神社前商店街の近くまで歩くと、キャンドル工房が見えます。

そこではキャンドルを作ることもでき、気仙沼の海を表現したキャンドルも売っています。

大きく目に入るのは、「ともしびプロジェクト」の文字。ここを経営する方が震災のボランティア活動をしていた際、「大震災を忘れてほしくない」という現地の方々の想いを聴き、「何かできないか」ということで立ち上がったプロジェクト。

「忘れないをカタチに」

そんなスローガンを掲げて、2011年11月11日から続いています。

毎月11日にキャンドルを灯し、SNSで想いを共有。そして想いを繋いでいく。素敵なキャンドルを買って、遠く離れた自宅から気仙沼に向けて、キャンドルの灯りと共に想いを伝えられるのは素敵ですね。

 

14:50~15:10 南町紫神社前商店街・MAST HANP

キャンドル工房を出て、次に訪ねたのは南町紫神社前商店街。大きな1,2階建ての施設で10店舗ほど入っています。

まず訪れたのはMAST HANP。施設の2階へと上がっていくと店舗があります。おしゃれな雑貨屋さんという感じですね。

気仙沼らしい言葉が書かれた帆布バッグを中心に、生活雑貨全般を取り扱っています。バッグの種類はかなり豊富で、ポケットティッシュ入れからトートバッグ・ショルダーバッグまで揃っています。

なんとこれらの帆布バッグはすべて手作りだそうで・・・レジの後ろでオーナーが作っているところを見ることができます。

手が空いたところでオーナーに話しかけてみました。

まつい「MAST HANPって素敵な名前ですね、どういった経緯で立ち上げたんですか?」

オーナー「もともと帆布を扱っていて、気仙沼っぽさを出した刺繍はふざけ半分だよ。名前の由来は、ちょうど昔あった店の目の前にマスト公園ってのがあったのと、船のマスト。そこからとってMAST HANPって名前に。」

懐かしそうに語る様子から、温かさが伝わるオーナーさん。楽しんで仕事をしていらっしゃる印象を受けます。単なる機能面の良さだけではなく、目の前でひとつひとつ丁寧に作る帆布バッグにきっと、作り手の想いを見出すことができるでしょう。

ちなみに、らっしーはちゃっかり購入しちゃっていました。

雑貨の方も、ペンひとつひとつがかなりハイセンスです。型と色を自分で選び、オーダーメイドで作ってもらうこともできます。僕も後日、改めて訪問して作っていただきました。

 

15:10~15:25 南町紫神社前商店街・揚げたてコロッケ屋!

商店街を出る前に、少し小腹が空いたので立ち寄ったのがこちらのお店。

コロッケ、一個80円。みんなで一つずつ注文したところ、「今から揚げるから5分ほど待ってて!」と。5分後出てきたコロッケはアツアツ。最高です。

食べていると、おばあちゃんがこの店について話してくれました。このコロッケ屋さんはもともと南気仙沼の方にあったらしく、学生が帰り際によく買っていたそう。

「いまでは南町紫神社前商店街の方に店を移したが、たまに学生時代通っていたお客さんがやってきて、おばあちゃんまだ居たんか~、と言ってくれる。」

「あの頃は“おばちゃん”だったのに、“おばあちゃん”になってしまったよ~笑」

 と笑顔でしゃべる姿にほっこりします。

 

15:30~16:00 K-port(渡辺謙さんがオーナーのカフェ)

さて、そんなこんなで時間も15時35分。最後に訪れたのは、渡辺謙さんの想いが詰まった「K-port」。

ここは、普段はカフェ、たまにイベントスペースとして活用され、人々の交流の場となっています。ライブ、トークショー、交流会などが行われたり、気仙沼の人びとが楽しんだり学んだりできるワークショップの場にもなります。

店に入ると謙さん直筆の手紙が。

ほぼ毎日、手書きで送られてくるそうです。メニューにも、ところどころに想いが書かれ、謙さんが身近にいるような感覚になります。

僕が頼んだのは、秋限定アイスゴマラテ(480円)。ホットバージョンもあります。

ほかにもデザートピザなど、謙さんこだわりのフードも充実で、食・グッズ・謙さんからのメッセージと、楽しめるものが沢山で、飽きさせないカフェでした。

 

16:20 バス停へ移動、仙台へバスで出発

時間はもう16時。16:20出発の仙台行きバスに乗るために、気仙沼市役所前のバス停に向かいます。

らっしーはこの旅以前、気仙沼は遠いところに観光地が点々としていて、歩きじゃ観光しづらい街だと思っていたらしいです。僕もわっきーもそうでした。

でもこのぶらり旅を通して、

  • ・面白くて楽しめる場所が意外とたくさんある
  • ・人の良さ、温かさが感じられる
  • ・地元に帰った安心感がある

と感じたようです。僕も全く同感です。

らっしー「話しかければみんな応えてくれるいい人ばかりで、全員がどこかで繋がっている感じ。またここに来るだろうし、落ち着いたら住みたいと思える街。」

そう言ってくれて、僕は感激です。

たった5時間だったかもしれませんが、その人にとって、想い出深い、忘れられない街となれば、僕だけでなく、この日出会った人達含め、気仙沼に関わる人みんなが喜んでくれるでしょう。

 

~最後に~

同じ港町でも気仙沼は、横浜や神戸のような見世物としての派手な観光地ではなく、「漁師の生活を支える港町」であり、「その暮らしを感じること」が正しい気仙沼観光の在り方ではないかと思います。

気仙沼をフルで感じるために、僕がオススメしたいのは、

「1泊以上滞在する!そして、朝6時に市場の屋上に行き、朝の海を眺める!」

ということ。SNSに投稿したくなるような景色が見られること、間違いなしです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

~この記事で辿った旅程~
時間 観光内容 ウェブサイト
11:30 仙台からバスで到着 宮城交通 高速バス 気仙沼・南三陸-仙台
11:35 ~ 11:45 気仙沼海の市(クルーカードを作る) 気仙沼クルーシップ
11:45 ~ 12:15 シャークミュージアム 気仙沼 海の市 シャークミュージアム
12:15 ~ 12:25 濱喜(ホヤ実食) 気仙沼 海の市 ショッピング
12:25 ~ 13:00 岸壁をお散歩(漁船を見る)
13:00 ~ 13:45 割烹世界(料亭でランチ) 割烹世界
13:45 ~ 14:00 内湾をお散歩
14:00 ~ 14:15 五十鈴神社 宮城まるごと探訪 五十鈴神社
14:15 ~ 14:30 移動
14:30 ~ 14:45 キャンドル工房 ともしびプロジェクト
14:50 ~ 15:10 MAST HANP MAST HANP
15:10 ~ 15:25 揚げたてコロッケ屋! 南町紫神社前商店街
15:25 ~ 15:30 移動
15:30 ~ 16:00 K-port(渡辺謙さんがオーナーのカフェ) K-port
16:00 ~ 16:15 バス停へ移動
16:20 仙台へバスで出発 宮城交通 高速バス 大船渡・気仙沼-仙台